レベニュープロセスの最適化、顧客にとって一貫性のあるコラボレーション強化により、売上成長を実現する戦略的なアプローチであるレベニューイネーブルメントについて紹介します。
レベニューイネーブルメント(Revenue Enablement)は、顧客の購買プロセスや期待が進化している中で、さまざまなチャネルや顧客対応機能におけるシームレスなコラボレーションの必要性が増しており、継続してビジネス成長を目指していくにおいて重要な概念です。
顧客は購買プロセス全体を通じてパーソナライズされ、そして一貫した心地よい体験を望んでいます。レベニューイネーブルメントでは、優れた顧客体験を提供するために、マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセス、サーポートを含むすべての顧客対応チームが連携することを実現します。Sirius Decisionsによると、連携に重点を置いている組織では、レベニューの成長が最大19%速くなり、収益性が最大15%高くなると言われています。その重要な役割を担うレベニューイネーブルメントについて、必要な背景や役割・価値について確認していきましょう。
レベニューイネーブルメントは、レベニュー組織の各部門が一貫性をもって顧客に価値を提示し優れた顧客体験を提供することによって、効率的に新規ビジネス獲得やビジネス価値向上を実現します。つまりレベニュープロセスの最適化により、収益最大化を実現する戦略的なアプローチです。
昨今、日本でも話題になることが多くなったセールスイネーブルメントはレベニューイネーブルメントの一部である営業組織に焦点を当てています。レベニューイネーブルメントは、レベニュープロセス全体の生産性向上を図ることを目的としています。Gartnerはこのように定義しています。つまり、セールスイネーブルメントの取組みを他の役割にも個別に適用させていこうという単純なサイロ化された取組みの延長ではないということです。
マーケティング、インサイドセールス、セールス、プリセールス、カスタマーサクセス、パートナーサクセスといったレベニュー組織のフィールドチームとの連携はもちろん、レベニューオペレーション(RevOps)の各オペレーションチームとも密に関わり、新たなテクノロジーの活用含めたプロセスの最適化、生産性の向上、テクノロジーの活用定着化を支援します。
テクノロジーとデータを駆使し、レベニューイネーブルメントにより一貫した連携が確保されることで、組織がレベニュープロセス全体を組織と顧客双方にとって最適化できるようになります。これはレベニュー成長を加速させ、顧客満足度を高め、コラボレーションを促進し、業務効率を高めるため、レベニュー組織にとって重要な概念となっています。
Gartnerによると2026年までに、イネーブルメント部門の60%が、顧客と接しレベニューを生み出す全ての役割をイネーブルメントするミッションを負うと言われています。実際に、フィールドセールスやセールス管理職、インサイドセールスに加えて、カスタマーサクセス、パートナーセールスやマーケティングなど他のレベニュー組織への支援も開始しているセールスイネーブルメント部門も増えてきています。(2022 Gartner Sales Enablement Benchmark Survey「What user communities/roles does your sales enablement function support?」)
認知から購買そしてロイヤルカスタマーになって頂くまでの一連の購買プロセスはますます複雑になってきています。かつて10年ほど前には当たり前になされていたビル倒し(ビルの最上階から下まで全ての企業を訪問する)といった飛び込み営業の時代は既に終わりました。購買する側の行動は変化し、小売店の買い物客の81%は購入前にオンラインでリサーチを実施しています。CSO InsightsによるとBtoBにおいても購買者の70%はセールスと関わる前に情報収取を自ら行い自身のニーズを定義していると言われています。レベニューイネーブルメントはセールスに留まらず、レベニュー組織が買い手とのあらゆるやりとりを最大限に活用しレベニュープロセスのあらゆる段階で買い手と効果的に関わり、ニーズを理解し、ニーズに合わせたエンゲージメントとソリューションを提供するために必要なテクノロジーとインサイトを備えていきます。
また、マーケティングオートメーションなどの顧客体験を高めるためのテクノロジーの浸透もあり、顧客は売り込みではなく、業界や業務を理解した上での価値提案や良好な関係構築など優れた顧客体験をより一層求めています。SalesforceのState of the Connected Customerによると顧客の66%はニーズに対応してもらえることを求め、88%はデジタル推進が加速することを期待し、95%は企業への信頼がそのブランドへの忠誠心を高めると答えています。顧客エンゲージメントの基準は変化しており、エンゲージメントとは、信頼を築くシームレスな体験を創造することです。そのため、購買に対してのアプローチをより洗練されたものへ進化させる必要が出てきました。
多くの企業では、サイロ化したマーケティング、セールス、サービス、その他の顧客対応部門の間でエンドトゥエンドの顧客エンゲージメントに責任を持つ明確な経営者がいません。このオーナーシップの欠如により、エンドトゥエンドの顧客体験における不調和やレベニュープロセスにおける組織の混乱を招いている可能性があります。多くの組織が競争上の差別化戦略としてデジタルに注目し、新しいテクノロジーの導入を進めています。しかしながら、サイロ化された組織ではその効果が限定的となってしまう可能性も含んでいます。タッチポイントが急増することにより更に社内の不整合や顧客体験の低下を招くことになっては元も子もありません。各部門での縦割り型のデータ活用や業務運営ではなく、レベニュー組織が必要な連携を図りデータを活用しながら一貫したメッセージで顧客に価値提供することが求められます。
レベニューイネーブルメントは、適切なフレームワーク、システム、プロセスを実装し、レベニュー組織の連携によって顧客エンゲージメントを最大限に発揮できるように支援します。
レベニューイネーブルメントはビジネス戦略や組織設計及びレベニュー組織全体を理解した上で、現状の組織の状況やデータを踏まえてイネーブルメント戦略を策定し、必要な改善サイクルをまわしていく状態を創り出すこと全般を担います。
レベニュープロセス、セールスプロセスを定義し、生産性と効果を向上させます。これにはワークフローの合理化、明確なセールスステージの定義、マーケティングからセールスへのリードのスムーズな移行などが含まれます。
マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセス、パートナーサクセスなどのレベニュー組織の各チームのスキルと知識を向上させるトレーニングプログラムを設計し、提供します。新たに入社する社員のオンボーディング、継続的なトレーニング、スキル向上のワークショップが含まれます。
セールスデッキ、製品ドキュメンテーション、ケーススタディ、セールスプレイブックなど、セールスとマーケティングのコンテンツのライブラリを整備し、最適なメッセージングを一貫して顧客に提供できるよう維持します。これらコンテンツは容易にアクセス可能で、異なるチームのニーズに合わせて提供される必要があります。
レベニュー組織の業務を効率化し、プロセスを自動化した上でデータを活用できるようにテクノロジーソリューションの選定についてRevOpsと連携しながら関与します。顧客管理(CRM)システム、マーケティングオートメーションプラットフォーム、セールスエンゲージメントプラットフォームなどが正しく活用されるためのトレーニングも含まれます。
レベニュー組織のパフォーマンスをトラッキングするための主要パフォーマンス指標(KPI)とメトリクスを定義します。これにはコンバージョン率、セールスパイプラインの健全性、セールスのフォーキャストなどをモニタリングし、改善のためのデータを収集し戦略の調整を行います。
データを活用しながらレベニュー組織の異なるチーム間のコミュニケーションとコラボレーションを促進し、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスがそれぞれの取り組みとメッセージにおいて一貫性を担保します。
主要な価値は、組織のレベニュー成長を促進することです。適切なスキルとリソースを提供することで、顧客との関係性の向上、ビジネス価値に貢献します。レベニュープロセスを最適化し、顧客のニーズに合致する提案を提供することで、売上を増加させます。
適切なテクノロジーの活用によりプロセスとワークフローを合理化・自動化し、時間や労力有益に活用できることを目指します。これにより、生産的なチームと短縮されたセールスサイクルが実現されます。
レベニュー組織の各チームが目標と戦略を理解しサイロ化せずに連携することを支援します。標準化されたトレーニングとコンテンツをレベニュー組織の各部門に提供することで、チームが顧客や見込み客と一貫したバリューメッセージでコミュニケーションすることを可能にし、ブランドと価値提案を強化します。顧客により価値ある体験を提供することで、競合他社から差別化されたポジショニングを築きます。
業界のトレンド、顧客のニーズや傾向、テクノロジーの進化を常に把握し、戦略とツールを継続的に適応・改善します。顧客体験向上や満足度改善につながる戦略を支援することが求められ、不可欠であるテクノロジーの活用において定着化を図ります。
情報と分析を活用して情報に基づいた意思決定を行うことが可能になります。パフォーマンスの測定と改善の領域を特定するためにデータを活用します。
データを収集し戦略の調整、改善を行うために、どのような指標を確認していくかその一例を紹介します。
購買サイクルや顧客期待の変化に伴い、顧客とデジタルやオフラインで接するレベニュー組織の各チームが一貫性を持って価値提供することが求められています。レベニューイネーブルメントは、アドホックではなく継続的に戦略性をもって組織が連携しビジネス成長していくために、組織やメンバーの能力を高めるための役割を果たします。セールスイネーブルメントを他の役割にも適用していくという単純なものではないことを理解頂けたのではないでしょうか。セールスイネーブルメントが既にある組織はレベニューイネーブルメントへの拡張、まだない組織はレベニュープロセス全体を意識したイネーブルメント組織づくりを検討してみてください。