組織づくり
Jun 10, 2024

ビジネスの成長とレベニュー組織連携を実現するOKR

競争の激しいビジネス環境において、どういった戦略を立てれば組織のポテンシャルを活かして持続的な成長を実現していくことができるかは常に課題です。1つの方法として注目されているOKRについて、OKRとは何か、なぜ重要なのかを紹介します。

競争の激しいビジネス環境において、どういった戦略を立てれば組織のポテンシャルを活かして持続的な成長を実現していくことができるかは常に課題です。1つの方法として注目が高まっているのがOKR(目標と主要な成果)の活用です。この記事では、OKRとは何か、なぜ重要なのかを紹介していきます。読み進めて頂くことで、ストレッチゴールを達成し、組織全体のパフォーマンス向上を実現に繋げていけるのではないでしょうか。

OKRとは

OKR(Objectives and Key Results)は、組織の目標設定と成果管理のためのマネジメントフレームワークです。OKRは1970年代にインテルのアンドリュー・グローブ氏が考案し、その後Googleなどのシリコンバレー企業が採用するようになりました。OKRの目的は、組織のビジョンを具体的な目標(O)と主要な成果指標(KR)に分割し、全社的な目線合わせを行うことです。組織や各部署は四半期ごとに目標とそれを達成するための主要な成果指標を設定していきます。

目標(O)は組織が達成を目指す明確で高いレベルの目標で、求められる成果を示します。この目標は、会社全体としての戦略と合致し、社員に目的意識と方向性を明示するものです。一方、主要な成果指標(KR)は目標(O)達成のために必要な具体的で量的な成果指標です。チームが成果を正確に測定できるように、具体的で測定可能で期限が定められている必要があります。OKRの方法論は、透明性があり機敏性があるように考えられており、組織内の連携、責任、継続的な改善を促していくものです。定期的にレビューすることで、企業は状況の変化に適応し、全員が同じ方向を向き、自律的に目標達成に取り組むことができます。Gartnerの調査でも、OKRを効果的に導入した組織では、従業員のパフォーマンスが20%向上する可能性があると言われています。

OKRとKPIの違い

OKRとKPIはどちらも目標設定と進捗管理の手法ですが、両者には以下のような違いがあります。

|視点の違い

  • OKRは戦略目標の達成にフォーカスしています。
  • KPIは業績評価にフォーカスしています。  

|運用の違い

  • OKRは目標達成のために自律的な判断を促します。
  • KPIは目標未達時の説明責任に重点が置かれます。  

OKRはストレッチ目標を設定することで、従業員の自主性とイノベーションを引き出します。一方KPIは業務プロセスの効率化に重点が置かれます。

このようにOKRとKPIは異なる目的を持っているため、両者をうまく組み合わせることで、戦略的な成長と日々の業務改善の両方を実現できます。KPIによるモニタリングとOKRによるチャレンジングな目標設定を組み合わせることで、持続可能な企業成長の実現を目指すことが可能です。

 OKRの注意点

OKRを設定する際のポイントとして、目標(O)と結果(KR)を分離して考えることが重要です。成長や革新を目指すからといって、必ずしも売上高や利益目標などの数値目標を設定する必要はありません。逆に、数値目標を達成することを目的としてしまうと、成長や革新が犠牲になってしまう可能性があります。

目標と結果を切り離して考えることで、目標そのものを直接的なゴールとすることができます。例えば、「新規事業を興す」「新サービスを開発する」「新市場に参入する」といった目標を、数値目標とは別に目標として設定していきます。

 数値目標はできる限り具体的な数値を設定することが大切です。「売上を増やす」ではなく「来年度の売上目標を1億円に設定する」のように、達成の判断基準が明確になるようにする必要があります。ただし、目標達成を優先する以上、こだわりすぎないことも重要です。目安として、達成可能性が50-70%程度のチャレンジングな目標を設定するのが適切だと言われています。

OKRの効果

OKRは、組織の連携、イノベーションの推進、業績の向上に大きな影響をもたらします。リーダーシップが実行を推進している適切なOKRの導入によって得られる効果について紹介していきます。

|組織の連携強化

OKRは全社的な目標と個人の目標を明確に結びつけます。社員それぞれが自分の日々の業務が会社の目標達成にどのように貢献しているかを理解できるため、全社的な連携が高まります。チームの目標が会社の戦略と合致していることで、結束力のある一体感のある組織が生まれます。SiriusDecisionsによると、連携に重点を置いている組織では、レベニューの成長が最大19%速くなり、収益性が最大15%高くなると言われています。

|当事者意識の醸成

OKR は、明確な期待(O)と測定可能な成果(KR)を設定することで説明責任の枠組みを確立します。特定の主要な結果と定期的な進捗状況の把握により、チームはパフォーマンスを評価し、結果の責任を負うことができます。これにより、責任感が醸成され、個人が成功に向けて積極的に行動できるようになります。社員一人ひとりが当事者意識高く目標に向けて活動することが根付くことで、組織は継続的な改善と高いパフォーマンスの文化を築くことができます。

 |イノベーションの促進

OKRはチャレンジングなストレッチ目標を設定することを奨励しています。これにより、社員は新しいアイデアを試してみる自由度が高まり、イノベーションが促進されます。OKR を利用してイノベーションを推進し、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、競争力を強化している企業もあります。分散型のアプローチで、会社全体の戦略との整合性を確保しながら、個々のチームが独自の目標と主要な結果を設定できるようにすることで、各チームがそれぞれチャレンジングな目標を達成することによるイノベーションを促しています。 

|業績の向上

OKRは社員の生産性と業績の向上を後押します。目標達成に全力を注ぐことで、社員は自然と業務の効率化を図るようになります。明確な目標を設定し、主要な結果をビジネスの優先順位と一致させることで、社員が組織の成功に向けて有意義に貢献できるようになるということです。また、進捗状況を定期的に確認することで、必要に応じて早期に改善を図ることもできます。 

|透明性の担保

OKRは、何を達成する必要があるのか、なぜそれが重要なのかを社員に明確に示していくことになります。目標と主な成果を明確に定義することで、組織は曖昧さを排除し、社員一人ひとりが自分の目的と仕事の影響を理解できるようになります。この明確さは、優先順位の高いイニシアティブに向けたモチベーションやリソースの調整に不可欠です。一般的にも会社の目標に対して明確な理解がある社員の方が、意欲的に業務に取組み、パフォーマンスが発揮できると言われています。

|柔軟性

OKR は四半期ごとに運用されるため、組織はビジネス環境の変化に適応して対応できます。四半期ごとのレビューと調整のプロセスにより、チームは経験から学び、焦点を再調整し、次の四半期に向けて取り組みを再調整することができます。この柔軟性により、組織は俊敏性と即応性を維持でき、前四半期から得られた洞察を活用して戦略と目標を洗練できます。また、迅速な軌道修正が可能になり、チームが新たな機会を掴んだり、予期せぬ課題に効果的に対処したりできるようになります。

これら不確実性の高い変化の多い時代において、持続的に成長可能な組織として成功するために不可欠な要素と言えるのではないでしょうか。

OKRの事例

|Google

GoogleはOKRを導入している最も有名な企業の1社です。Googleに関してはこちらに具体的に動画も含めて書かれています。以下に取組みのポイントについてまとめて記載します。

  • GoogleのOKRは、元グーグル社員であるジョン・ドーア氏が考案した目標設定手法をベースとしている
  • Googleでは四半期ごとに全社的なOKRが設定され、各部門と個人もそれに合わせたOKRを設定する
  • OKRは上位下達ではなく、下位者が目標を提案し、上司がフィードバックして調整する形式で設定される
  • OKRには目標(Objectives)と主要結果(Key Results)の2つの要素が含まれる
  • 目標は高いレベルの成果を定義し、主要結果はその達成度を測定可能な形で定義する
  • GoogleではOKRの達成度を0~1の数値で評価し、0.6~0.7程度の達成を目標とする
  • OKRは四半期ごとに見直され、目標未達であっても懲罰はない。失敗からの学びを重視する
  • OKRを通じてGoogleは社員の自律性とイノベーションを高め、組織のアジリティを向上させている

|日本における成果の例

日本企業においても大手企業のみならずIT企業を中心にスタートアップでも活用が進んできています。活用ケースおける成果の例としては下記があげられます。

  • OKRを導入することで社内のオープンイノベーションを推進し、目標設定と進捗共有を頻繁に行うことで、部門を超えたコラボレーションが生まれ、新規事業のスピードが上がった
  • 社員同士が目標を共有しやすい組織文化の醸成と、社員の主体性向上を目的にOKRを導入し、四半期ごとに定量目標を設定・進捗状況を共有することで、社員一人ひとりが会社の方向性を理解しやすくなり、成長が加速した

|レベニュー組織でのOKRの例

■ マーケティング

目標|Objective

  • マーケティングの売上貢献比率向上

主要な成果指標|Key Result

  • ターゲットセグメントのリード獲得を◯パーセント増加
  • MQLを◯パーセント増加
  • 年次カンファレンスの登録者数◯名様を実現

■ カスタマーサクセス

目標|Objective

  • 顧客体験と満足度の向上

主要な成果指標|Key Result

  • ネットプロモータースコア(NPS) を◯ポイント増加
  • チャーンレートを◯パーセント削減
  • ◯パーセントの顧客満足度スコアを達成

■ セールス

目標|Objective

  • 営業の生産性と効率を向上

主要な成果指標|Key Result

  • 1週間あたりの営業電話/ミーティングの数を◯パーセント増加
  • 販売サイクルの長さを◯日短縮
  • 商談の受注率を◯パーセント改善 

効果的なOKRのポイント

OKR組織が戦略を効果的に実行するための強力なフレームワークであり、経営陣が実行を推進し、チーム全体の完全な連携を確保するための貴重なツールでもあります。成功するOKRには、経営陣のコミットメントと継続的なフォローが不可欠です。ここではOKR の導入を成功させるにあたり、組織が留意すべき重要な考慮事項について記載します。

|戦術を文書化する

目標と主要な結果を定義することに加えて、望ましい結果を達成するために採用された具体的な戦術と取り組みを文書化することが重要です。この明確さはチームの調整に役立ち、成功に必要な戦略的行動を全員が確実に理解できるようになります。実行可能なステップとアプローチの概要を示すことで、チームは実行に向けた明確なロードマップを立てることができます。戦術を文書化することで、OKRの達成に向けた進捗状況を効果的に追跡および評価することもできます。

|依存関係を把握する

OKRを達成するために必要な他のチームまたはリソースへの依存関係を特定し、文書化します。複雑なビジネス環境では、成功は部門を超えたコラボレーションとサポートに依存することが多いことを認識することが重要です。依存関係を早期に特定することで、組織は潜在的な障害やリソースの制約に積極的に対処できます。これにより、チームは取り組みを調整し、効果的にコミュニケーションを図り、関連する利害関係者に支援を求めることができ、OKRをスムーズかつ効率的に実行できるようになります。

|リーダーシップのコミットメント

OKRが組織の成長に寄与するためには、経営陣がOKRにコミットし、その重要性を組織に示す必要があります。トップがOKRの導入理由やメリットを繰り返し伝えることで、組織全体に浸透させることに繋がります。リーダーはOKRの重要性を積極的に伝え、チームを組織戦略に合わせて調整し、透明性、説明責任、継続的改善の価値を強調する必要があります。リーダーはまた、模範を示し、自らのOK を設定してコミットメントを示し、目標指向のパフォーマンスの文化を生み出す必要があります。

|明確な指標と追跡メカニズムを確立する

進捗と成功を効果的に測定するには、主要な結果ごとに明確な指標を確立することが不可欠です。これらの指標は、チームがパフォーマンスを正確に追跡できるように、具体的、測定可能、期限付きである必要があります。定期的な更新と進行状況の可視化を可能にする追跡メカニズムを実装します。これには、毎週または毎月のチェックイン、進捗レポート、または専用の OKR 追跡ソフトウェアが含まれます。進捗状況を透明かつ頻繁に伝達することで、チームの関与と責任が維持されます。

|定期的なレビューとフィードバック

OKRは四半期ごとに設定し直すのが一般的です。1年などのスパンで確定させるものではありません。そのため、四半期ごとに進捗をレビューし、必要に応じてOKRの修正や優先順位の見直しを行うことが大切です。レビューには経営陣が参加し、部門間の連携も確認することで、会社全体の戦略とOKRを整合させることができます。定期的なチェックインにより、チームは進捗状況を振り返り、課題や機会を特定し、必要に応じて戦術を適応させることができます。継続的な調整と改善を確実にするために、オープンなフィードバックとディスカッションを奨励します。

|トレーニングとサポート

OKR の原則と実践についてチームを教育するためのトレーニングとリソースを提供します。効果的なOKRの設定、組織の戦略との調整、進捗状況の効果的な追跡に関するガイダンスを提供します。オープンな対話を奨励し、OKRの導入プロセス中に発生する可能性のある質問や課題に対処するためのサポートを提供します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。OKRは、戦略的目標の達成、連携の促進、成功の促進を目指す組織にとって、非常に有益なアプローチです。明確な目標と測定可能な主要な成果を設定することで、企業はチームの集中力、当事者意識、柔軟性を強化できます。OKRを導入すると、チームに権限が与えられ、コラボレーションが促進され、ビジネス全体の成長が促進されます。まず小規模の部門やチームでOKRを試験的に運用するトライアル期間を設けてみるのもおすすめです。

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