職種横断の汎用的な面接対策ではなく、特に営業職の中途採用面接でのスキルレベルや考え方を深く把握するための質問項目について、外資系IT企業の選考で実施されている内容をもとに質問の意図含めて紹介します。
企業の中途採用における営業職の面接では、職種横断での基礎的・汎用的な質問項目の他に、候補者の営業として経験内容やスキルレベルを深く確認するものもあります。ここでは外資系IT企業の営業職の採用面接において、実際に営業部長として実施していた質問とその意図を紹介していきます。
有形商材の法人営業や個人顧客向けの営業の場合、リレーション構築により「自分」を売り成果につなげている方もいらっしゃいます。それが仮に自分で強みであると思っていても、その訴求だけに頼ってしまうと業界によっては合格を勝ち取ることは難しくなります。面接においては自己認識している強みではなく、応募先の企業が必要としている要素と自分との共通点となる箇所を意識し明確に伝えていくことが必要です。
多くの企業でデジタルトランスフォーメーションが進み、多くの営業組織も転換期にあります。IT企業やスタートアップ企業ではなくても、デジタル化された営業組織に順応できる方であるかを把握する目的の質問もなされます。面接においては表面的なコツに頼った台詞の準備ではなく、経験や考えを深く質問されても対応できるようにしっかりと振り返っておくことが重要です。ここからは、営業としてのスキルレベル確認について質問やその背景を確認していきましょう。
営業のスキル確認を目的としてよく聞かれる質問をご紹介します。
面接官は候補者の所属業界・在籍企業や職務経歴書の内容からある程度、営業スタイルについては想像可能です。この質問は、候補者がどのように組立てて回答するかという点から「思考力」「コミュニケーション力」を確認します。また、どの程度数字を細かく意識しているかを把握する意図もあります。数値でご自身の営業スタイルについてシンプルかつ具体的に語れるようにしておきましょう。ここを営業スキルの確認の入り口とした上で、候補者が営業としての価値をどのように認識しているか、戦況を捉えて対応する力を掘り下げる質問に繋がっていくことも多いイントロ的位置づけの質問です。
■ 質問例
販売している製品やサービスによって、同じ法人営業でもカウンターとなる部門や職位が異なります。応募先の企業の製品・サービスの対象となるオーディエンスと合致していれば、親和性があると認識される可能性は高いです。しかし仮に異なる場合にも、顧客の課題を深く把握できていれば、入社後キャッチアップ頂く素地があると認識される可能性があります。この質問は、ターゲットオーディエンスと課題を確認することで「想像力」「課題特定力」「ヒアリング力」を把握する意図があります。応募先の企業のアプローチ対象がCxOである場合、この課題のレベル(課題ではなく些末な問題把握となっているなど)によっては、能力不足と判断されます。
■ 質問例
企業のビジネス戦略達成のための課題解決を価値として提案することが求められる企業においては特に、値引き(価格の価値訴求)やリレーション営業(会食・ゴルフや足繁く顔を出す)や会社のネームバリューの力を借りるなどのビジネス価値とはかけ離れた手法を語っても、再現性があるとは認識されません。この質問は、これまでの価値訴求の経験の傾向を把握する意図があります。ビジネス戦略・ビジネス課題・問題を整理する「思考力」と「価値訴求力」及び一連のセールスプロセスの「構成力」を確認します。
■ 質問例
過去活躍していた営業でも、転職先でもまた活躍可能とは限りません。環境要因や運のみなどによる成果ではなく、再現性をもって活躍できる方が求められています。この質問は、成果を出すための戦術組立ての「思考力」や「再現性」を把握する意図があります。見込顧客の発掘の方法、新規・既存顧客に対する活動や売上の割合、製品が複数ある場合にはその割合など、戦略的思考をもって行動しているかを確認します。応募先の企業のビジネスフェーズが初期の場合には、商談創出のソースバランスも特に重要な観点です。初期フェーズでは、マーケティング・インサイドセールスやパートナーの貢献にのみ依存しすぎず、営業として自力で商談発掘経験があることも重視されます。
■ 質問例
営業責任者が面接官である場合は特に、環境や与えられているテリトリーなどの要因も影響し、未達成になってしまうことがありえることを理解していることが多いです。この質問は、仮に未達成だったとしても、目標達成へのこだわりやどう改善できれば結果を出せると考えているか、具体的なアクションを確認し、「スタンス」「思考力」が自社に合っているか把握する意図があります。特に外資系企業においては目標達成において高いコミットメントが求められます。簡単に無理だと諦め来期どうにかするのではなく、短期でリカバリーする力やスタンスも必要です。未達成だった期間について環境要因以外の自責の要因も振り返り、どうすれば成果につながったと思うかも含めて考えておきましょう。
■ 質問例
活躍している営業の多くは、成功や失敗を徹底して振り返り、成功を再現し失敗を回避するためのセールスプレイの設計を行っています。この質問は、候補者の「分析力」や「応用力」を把握する意図があります。これまでの営業活動の中で、受注商談や失注商談をどのような頻度でどのように分析し、成果を出すためにどういった思考プロセスで改善活動を行っているのかを確認します。成果を出せている理由を運やセンスなどの感覚的な理由で片付けるのではなく、言語化しておきましょう。
■ 質問例
新規の営業活動において、初回商談の内容がセールスサイクルや受注可能性に大きく影響します。この質問は、候補者がどういうスピード感・リズムでセールスプロセス全体を捉えて営業活動を行っているのか把握する意図があります。販売する製品・サービスによって、適切なセールスプレイは異なりますが、事前準備の内容、1時間の使い方、商談のプロセスやセールスプレイをどのように組み立てているか営業戦術を確認します。
■ 質問例
企業によって営業目標の掲げ方や個々の営業への目標の割り振り方は異なります。達成率が高いからといって能力が高いとは限りませんし、逆も然りです。この質問は、候補者が組織全体の中でどういう位置づけかを知り、それを候補者自身がどのように捉えているかを把握する意図があります。候補者が自分の立ち位置をどう理解し、結果を出していくにはどうすればいいと認識しているのかを確認します。組織の中の他の営業と自分自身との差を良い点・チャレンジな点をそれぞれ言語化しておきましょう。
■ 質問例
新規開拓でも既存顧客との取引深耕においても、攻略のためのプランニングは重要です。この質問では、新規開拓や取引拡充においてどのようなリソースを活用しながらどういう計画を立てどの程度実行に移しているのかを確認し、「周囲の巻き込む力」や机上の空論や絵に描いた餅ではなく具体的に実現する「実行力」があるのかを把握する意図があります。
■ 質問例
多くのIT企業やスタートアップ企業では、SalesforceなどのSFA・CRM、Adobe Marketo EngageなどのMA、Slack、Zoom、MiiTelなど様々なテクノロジーを活用し生産性高い営業組織づくりを行っています。この質問は、そういった環境での経験の有無、ない場合にはキャッチアップ可能な方かを把握する意図があります。IT企業やスタートアップ企業は比較的スピード感があり、トレンドに敏感であることも求められます。現職企業でテクノロジー活用を行っていないのは仕方のないことだとしても、なにも知ろうとしていない方はカルチャーフィットが難しいと判断される可能性があります。
■ 質問例
以上が、中途採用面接において特に営業のプレイヤーとしての経験や考え方の把握を目的として実施されている質問です。
多くの企業のデジタルトランスフォーメーションが進む中で、IT企業やスタートアップ企業ではなくてもデジタルを活用した営業モデルの導入が進んでいます。現職が旧来型の営業組織だったとしても、営業としての実践内容を言語化していくことで、再現性のある経験領域を見つけていくことが可能です。異なる領域でも成果を出せる営業であると証明していくために、数値やロジックで自身の経験やスキルについてお伝えていけるように準備していきましょう。
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