SaaS(Software as a Service)業界は、成長している分野の1つで、多くの人々が次のキャリアとして望む業界です。そのレベニュー組織を構成する職種の役割について紹介します。
SaaS(Software as a Service)業界は、成長している分野の1つで、多くの人々が次のキャリアとして望む業界です。クラウドベースのソフトウェアとサービスは、企業にとって効率的で費用対効果の高い選択肢となっており、その結果この業界は成長しています。初めてSaaS業界に転職を考える場合、レベニュー組織について知っておくことが重要です。自分自身の経験領域がどのように応募ポジションにマッチするのかを考えるためにも各職種の役割について理解を深めておきましょう。
レベニュー組織とは、GTM(Go-To-Market)チームとも呼ばれ、ビジネス売上・収益拡大を重要な目標とし、顧客との関わりから持続的な売上創出を確保するために設計された部門やチームのことを指します。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスや各オペレーション部門、パートナーサクセスなどを総称してレベニュー組織といいます。
これらの役割は、レベニュー組織を効果的に構築し、顧客の成功と企業の成長を支える重要な要素です。しかし、全ての企業がこのように分業化されている状態が正しいというわけではありません。その企業が提供する製品やサービスのターゲットとなるマーケット、購買者の職種的特性、製品そのものの特性などによって、販売方法は当然異なります。また、企業や製品・サービスの認知度によってもマーケティングやセールスの活動による成果効率は変わっていきます。認知やリード獲得から受注、そして契約更新といった一連のレベニュープロセスにおいて、どこがボトルネックかに応じて、どのようにリソースを割り当てていくべきか、どのように役割を配置していくべきかということが決まります。
製品のブランド認知度を高め、リードを生成し、新規及び既存顧客との関係を構築します。マーケットのニーズやトレンドを理解し、オンライン・オフラインでのマーケティングキャンペーンを計画・実行します。セールスがNamed Accountとして戦略的にターゲティングしている領域におけるアカウントベースドマーケティング(ABM)、新規潜在顧客に対するリードナーチャリング、デジタルを駆使してオンラインでの無料体験や販売につなげていくマーケティング活動など、製品やサービスの特性やマーケットに応じて戦略を策定し実行します。主な評価指標としては、新規リードの獲得数、ターゲットアカウントのリード獲得数、MQL数、有効商談件数、マーケティング貢献の受注金額(マーケティングジェンの商談)など、ビジネス成果につながる施策実行と貢献が期待されます。
顧客と初めて直接対話する会社の顔として、製品やサービスの価値を伝達し、顧客と関係構築を実施しながら商談機会を創出します。電話、オンラインミーティング、チャット、メールなどを通じて、顧客のビジネス目標や課題を特定した上で、自社製品で提供可能な解決策等インサイトを提供し、セールスの提案機会を獲得します。また、マーケティングとセールスの橋渡し役として、データマネジメントにおいても重要な役割を果たします。顧客や商談管理のためにセールスフォースオートメーション(SFA)やマーケティングオートメーション(MA)をはじめとするシステムの理解も求められます。属する組織は、マーケティング本部やセールス本部など企業によって様々であり、どちらが正解ということはありません。主な評価指標としては、初回商談獲得数、商談化件数など、単なるアポイントの獲得ではなく、セールスが商談としてマネジメントしていくに値する提案機会の創出が期待されます。異業界でのセールス経験の場合、入門ポジションとなることもあります。
オンラインや対面で顧客と対話し、顧客のビジネス目標・ビジネス課題・問題を理解し、差別化された解決策・自社だからこそ提供できる価値に共感を得て受注に繋げます。顧客のビジネスや業務に対しての深い理解や洞察力、商談を前に推し進めるためのセールスプレイの設計力・推進力、社内外の必要なリソースをオーケストレーションする統率力、月次・四半期など一定のサイクルで求められたターゲットを達成するため逆算したゲームプランの設計や商談マネジメント力などが求められます。商談のマネジメントやオンライン商談においては、様々なセールステクノロジーを活用した生産性の高い動きも必要です。主な評価指標としては、新規顧客獲得数(New Logo)、新規受注金額(Gross-MRR、Gross-ARR、Net-MRR、Net-ARR、ACV等)など、新たなビジネス機会の受注が期待されます。
技術面や製品の面でセールスよりも高い専門性を持ち、セールスと連携しながら、顧客にとっての価値につながる具体的な導入要件の議論やテクノロジー連携などのコンサルティングを受注前段階で実施します。特に大型商談などにおいて、セールスとタッグを組み、差別化された解決策や自社ならではの価値訴求のための商談シナリオを設計します。高度な製品デモンストレーションにおいては、機能説明ではない価値提示が求められ、顧客のビジネスや業務に対しての深い理解力が必要です。新たな製品との連携が発生する商談においてはプロダクトチームとの検証等の社内リソースとの密なコミュニケーションも求められます。主な評価指標としては、組織全体の新規顧客獲得数(New Logo)、組織全体の新規受注金額(Gross-MRR、Gross-ARR、Net-MRR、Net-ARR、ACV等)など、担当するセールス個人の目標達成に限らず、組織全体の成果への貢献が期待されます。
セールスとソリューションコンサルタントの商談受注後に、顧客に対して導入支援を実施します。商談時の提案内容や顧客にとっての価値を理解し、製品の最適な利用方法を指導します。製品を活用して目指す目的を達成するための方法やテクノロジー連携にかかるアドバイスの提供、製品についての理解促進など顧客が自律して製品活用できるようになるためのステップを伴走支援します。プロジェクト終了のタイミングでは、顧客の習熟度や活用度等をセールスやカスタマーサクセスに共有します。主な評価指標としては、導入支援を行った顧客からの満足度調査(NPS)の結果、導入支援を行った企業のリテンションレートなど、顧客の製品オンボーディングへの貢献が期待されます。
セールスの受注後やコンサルタントによる導入支援のプロジェクト終了後から、顧客の成功を支援し、顧客満足度を維持・向上を図ります。顧客の製品活用度や成熟度を把握した上で、顧客セグメントに応じた体制により、有償・無償のトレーニング機会の提供や定期チェックインを実施し、顧客が製品を最大限に活用できるようにサポートします。カスタマーマーケティングとの連携の中でユーザーコミュニティの運営を行うなど、個別の顧客対応以外の手法により顧客への提供価値を維持向上させる取り組みが求められます。主な評価指標としては、リテンションレート(契約更新率)またはチャーンレート(解約率)といった活用促進による契約の継続性への貢献や、製品の活動度(活用されている機能や頻度の増加、活用している企業側の部門や従業員数の増加)や顧客満足度調査(NPS)など製品の利用定着化への貢献が期待されます。
製品やサービスを再販するリセラー、製品やサービスの導入支援を実施するコンサルティングパートナー、製品と連携することにより顧客に対して相乗効果を提供するテクノロジーパートナーといったパートナー企業との協力関係を構築し、パートナーシップの成功を支援します。パートナー企業が自律的にビジネス創出を実現するためのトレーニングやリソースの提供の役割を担い、パートナー企業との協業によるビジネス成長を促進します。パートナーセールス、パートナーアライアンスなど企業によって総称は異なります。主な評価指標としては、パートナーソースの商談金額、パートナーソースの受注金額、コンサルティングパートナーの有資格者人数、新たなテクノロジーパートナーの開拓など、パートナービジネスによる三方良しのビジネス機会創出が期待されます。
レベニュー組織を構成する各部門であるマーケティング、セールス、カスタマーサクセスの協力関係を支え、顧客体験を最適化し、収益を最大化するための戦略的なアプローチを統括します。マーケティングオートメーション(MA)やセールスフォースオートメーション(SFA)など、必要なテクノロジーを正しく理解し、適切なツールの選定・導入を担います。マーケティングデータ、セールスデータ、顧客データを統合し、それぞれのレベニュープロセスの評価や、効率性・生産性の向上を支援します。リードジェネレーション、リードナーチャリング、セールスのリードフォローアップ、商談のプロセスを管理します。
主な評価指標としては、テクノロジーの活用度、フィールドチームからの満足度、フィールドチームの生産性向上、フィールド組織の評価指標の達成など、戦略を実現するための貢献が期待されます。
顧客に価値を継続して提供し、その結果製品やサービスが選ばれ続けることで、効果的に売上成長するために、レベニュー組織に関連するステークホルダーを支援する戦略的なアプローチを支えます。GTM戦略や組織設計及びレベニュー組織全体を理解し、現状のレベニュー組織の状態やレベニュープロセスの各データを踏まえて、必要な改善サイクルをまわしていく状態を創り出すこと全般を担います。レベニュープロセスの最適化、各部門の生産性向上を支援し、オペレーションチームとの連携によるテクノロジーや仕組みの定着化のための社内教育や部門ごとのトレーニングプログラムの設計・提供、評価指標の設計、コーチングなどをアドホックではなくプロセスベースで実施します。対象となる部門をインサイドセールスやセールスに絞る場合にはセールスイネーブルメント、パートナー企業を対象とする場合にはパートナーイネーブルメントと呼ばれます。主な評価指標としては、レベニュー目標の達成、セールスやカスタマーサクセスの評価指標や、対象となる部門の指標、達成率の中央値の改善など各部門が効果的に成果貢献できるように支援することが期待されます。
レベニュー組織の背景や各職種の一般的な期待役割についてご紹介しました。各役割が密に影響し合いながらレベニュー戦略を担っているからこそ、その組織役割の背景をしっかりと理解しその役割で成果を出すことで、将来的にはその職種のスペシャリストやマネジメントの他、関連する別の職種へのキャリアチェンジの可能性も広がります。職種名からの想像での先入観ではなく、その組織における役割背景を理解した上で、将来を見据えたキャリアパスを検討していきましょう。