イベントレポート
Jun 10, 2024

Event Report|カスタマーサクセスフェスティバル|アムステルダム

オランダ・アムステルダムで開催されたカスタマーサクセスのカンファレンスに唯一の日本からの参加者として出席しました。弊社が注目したパートをいくつか紹介します。

カスタマーサクセスの祭典|Customer Success Festival

2024年5月16日と17日にオランダのアムステルダムで開催されたTheAlliance主催のCustomer Success Festival(カスタマーサクセスフェスティバル)に、弊社は日本から唯一参加しました。

本イベントでは、ビジョン主導のカスタマーサクセスリーダーシップ、AI時代における人間の相互作用の重要性、カスタマーサクセスとプロダクトチームの協力、カスタマーサクセスの収益化など、さまざまな最新事例の共有とディスカッション、ネットワーキングが行われました。Workday、Randstad、FinancialTimes、Salesforce、Oracleなどのカスタマーサクセスリーダーの方々が登壇し、実践的なケーススタディ、ラウンドテーブルディスカッション、高性能なカスタマーサクセスチームの育成に関するインサイトがシェアされました。

会場となったホテルオークラ

会場はまさかの日本ブランド、ホテルオークラ・アムステルダム。予想以上の盛況ぶりで、受付には大変な行列ができていました。当日はカスタマーサクセスだけでなく、チーフレベニューオフィサー(CRO)やセールスイネーブルメントなど、レベニュー組織に関するイベントも同時開催されており、非常に賑わっていました。カスタマーサクセスの参加者はそれほど多くないのではと思っていましたが、テーブルが追加されるほどでこの分野の注目度の高さを感じました。

特に注目したセッションは、ドイツの大手製造業シーメンス(Siemens)と、世界最大手のHRカンパニーであるランスタッド(Randstad)です。大企業かつSaaS企業ではない2社がカスタマーサクセスに取り組み、成果を上げている事例は、今後の日本企業のレベニュー組織変革のヒントになるのではないかと思います。

製造業|シーメンスのカスタマーサクセス事例

シーメンスはデジタルインダストリーソフトウェアの部門で、サブスクリプションモデルへの移行を進めています。オートデスクからカスタマーサクセスのリーダーを招聘し、ソフトウェア部門のカスタマーサクセスの強化を推進しています。彼が最初に転職する際に打診した条件の一つが、戦略とCSOps(カスタマーサクセスオペレーション)を担う組織を新設することで、セントラルで推進するこれらの役割が必須だと説きました。

彼らの顧客は設計・開発・製造するような複雑なプロセスに関わっているため、様々なシーンに対応していく必要があります。この3年間で60以上の戦術とベストプラクティスの開発、プレイブックの標準化、アセスメントツールの開発など、多様な取り組みを実施しました。CSMがキャンペーンを実行できる体制を整え、顧客のメッセージングやステークホルダーとの関係を強化し、顧客が効果的にソフトウェアを活用し、業務の改善を実現するためのフレームワークを提供しています。

スピーカーは、共通の目標や行動規範を示したプレイブック、標準化されたツール、分析など、再現性とスケーラビリティを高く設計することが重要であると述べています。CSOpsはこの標準化において必須の役割を果たしています。

2022年度のデジタルインダストリーソフトウェア部門の売上は50億ドル、利益は10億ドルに達し、今後CSMチームは約500名に拡大する予定だと言うのには驚きました。

スピーカーはリーダーシップが新しいビジネスモデルにコミットし、共通のビジョンと戦略を持つことが重要であると述べています。リーダーシップの理解と関与が、サブスクリプションビジネスへの移行などの大きなビジネステーマにおいて試されると感じたセッションでした。 

Siemens登壇資料より抜粋

人材サービス|ランスタッドのカスタマーサクセス事例

ランスタッドはオランダに本社を置く世界最大級の人材サービス企業で、日本を含むグローバルに展開し、幅広い業界に人材サービスを提供しています。2001年に初めて、製造拠点が世界中にあるグローバルな顧客に対して専門のカスタマーサクセスマネジメントチームを組成し、50人の既存顧客を担当しました。

2006年頃には、同じ業界の顧客が抱える課題の共通点が見えてきて、顧客を業界セグメント別に設置する試みを始めました。カスタマーサクセス担当は各業界の専門家になる必要があり、デスクリサーチや市場調査を行いながら顧客とのディスカッションに臨みます。これらの活動を通じて業界理解を深める取り組みを3年間続けました。

2008年以降、ランスタッドは大規模な買収を行い、20カ国から40カ国に拠点を広げ、採用会社だけでなくオンボーディング、スキルアップなど、さまざまな人材に関わるサービスを提供する会社と統合し、ワンストッププロバイダーになることを目指しました。これに大きく貢献したのがカスタマーサクセスチームです。業界知識と顧客との対話を通じてクロスセルの機会を創出し、統合の成功に重要な役割を果たしました。

2016年には顧客数が5倍に増え、グローバル化も進みましたが、人材不足は自社においても課題となりました。ガートナー社によると、ストラテジックカスタマーと良好な関係を保つために、一人の営業やカスタマーサクセスが担当できる上限は4~5社とされていますが、ランスタッドでは一人当たり9~10社を担当しており、最適化が必要な転換点が来ていることを認識しました。

 2019年1月1日に、これまでのカスタマーマネジメント活動を一旦停止し、持続可能なモデルを実行することを決定しました。長期的視点での持続可能なモデルに向けた変化に対応するため、カスタマーのマチュリティマトリックスを作成し、セグメント化とスコアリングによって対応生産性の最適化に取り組むようになりました。

セグメントにはダイヤモンドからシルバーまであり、ダイヤモンドは成熟度が高く、シルバーチームは将来の成長可能性が高いカスタマーです。スコアリングによって自動的にセグメンテーションを行い、ダイヤモンドのように成熟度が高いカスタマーには1:1の対応を求め、一人当たりの対応社数を絞る必要があります。

これらのダイナミックなセグメント最適化によって、顧客数は200人以上から103人に減少しましたが、平均収益は47.6Mに増加しました。2015年には総収益の14.3%がグローバルカスタマーからの収益でしたが、現在では20%近くに増加しています。

ランスタッドのケースは、特に重要な顧客に対するカスタマーサクセス活動に焦点を当て、最適化されたセグメンテーションによって、より高い収益性を実現する好事例だと思います。

Ranstad登壇資料より抜粋

さいごに 

いかがでしたでしょうか。これらのケーススタディから見えてくることは、SaaS企業だけでなく、従来からある様々なビジネスが新たなレベニュー戦略への転換が求められており、その変革はダイナミックな物となります。大きな変革にはトップのコミット、実現性の高い戦略、そして組織として一枚岩で取り組む戦略実行が求められると感じます。IT業界以外のカスタマーサクセスの取組みは特に興味深く、ヨーロッパの企業の組織課題やアプローチは日本企業にとっても参考になる要素が多いのではないでしょうか。日本では、レベニュー貢献するカスタマーサクセス組織をオペレーションモデル含めて設計していくことに課題感をお持ちのお客様も多いです。エンハンプではグローバル企業でのストラテジックカスタマーサクセスの経験やオペレーションモデルのナレッジを元にカスタマーサクセスの組織化、オペレーションモデルの設計構築を支援しています。お気軽にお問い合わせください。

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